スキューバダイビングのあれこれ

ダイビングのライセンスについて

日本のダイビングスタイル

日本のダイビングスタイルは欧米のスタイルと比べて少し特殊です。

ダイビングのライセンスの仕組みは、元々欧米で作られたものです。
例えばPADIはアメリカで発足した組織です。
日本でライセンスを取得される人も、アメリカで作られたライセンス取得のカリキュラムと同じものを使います。

PADIのライセンスで、最初に取得できるのはオープンウォータダイバーです。
オープンウォータダイバーを取得したあとも、ステップアップするためのカリキュラムがたくさん用意されています。
オープンウォータダイバーのライセンスを取ると、何ができるかは、テキストなどでも説明されています。

このライセンスを取ると、「バディ同士でダイビングを楽しむことができる」ということになります。
インストラクターやダイブマスターなどの引率無しに、ダイビングをすることができるのです。
(これを一般的に「バディダイビング(Buddy Diving)」とか「セルフダイビング」と呼びます)
PADIのオープンウォータダイバーのカリキュラムは、そのためのスキルが身に付くように作られていますし、そうなることを前提として教材が作られています。

実際、欧米では多くのダイバーがそのようにしてダイビングを楽しんでいます。

ところが、日本の現状は違います。
日本では、多くのダイバーがインストラクターと一緒に潜るダイビングしかしません。
バディ(Buddy)同士で潜っているダイバーは、ダイビングのライセンスを取っている人の中で1%もいません。恐らく、数千人に一人と言う割合では無いでしょうか。

そもそも日本のダイビング業界そのものが、バディ同士で潜ることを勧めていません。
もしダイバーがみんなインストラクターを付けずにダイビングをするようになったらどうなるのでしょう?
日本のダイビングショップの多くが無くなってしまいます。

ですから、例えばお客様がダイビングショップに行って、「インストラクター無しで潜りたい」と言っても、ほとんどの場合断られてしまいます。

良い面と悪い面

この日本の特殊なダイビング事情は、良い面も悪い面も有ります。
良い面は、安心感が得られる点です。
インストラクターと一緒に潜れると言う安心感があるからダイビングを続けている人も多いのかも知れません。
悪い面は、ダイバー自身のスキルと安全意識の低下です。

ところで、この安心感。本当に安心して良いのでしょうか?

インストラクターはお客様を守れない

多くのダイバーが「インストラクターと一緒に潜れば安全」と思っているかも知れません。
しかし、残念ながらインストラクターはお客様を守ることができません。

すでに海洋実習で潜った方や、ダイビングのライセンスを取られたお客様ならおわかりかと思いますが、ダイビングをする際、インストラクターは基本的に前を向いて泳ぎ、その後ろをお客様が付いていきます。これは世界中どこへ行っても同じで、そこは日本でも同じです。
その間、インストラクターからお客様が見えません。後ろに目が付いている訳では有りませんから、当然ながらお客様はインストラクターの視野に入りません。
時々振り返ってお客様が付いてきているかどうかを確認しますが、それでもダイビング中の大半は前を向いて泳いでいます。
逆に、お客様をずっと見ていてはインストラクター(水中ガイド)として仕事になりません。
もちろん、お客様のレベルや状況に応じて、より頻繁に後ろを確認することはあります。
当店では、危険と判断するような場合には一切お客様から目を離さないよう、後ろ向きで常にお客様を見ながら泳ぐようスタッフに指導しています。

さて、前述のようにインストラクターは常にお客様を見ている訳では無いのですが、この時にもし後ろを泳いでいるお客様にトラブルが有ったとしたらどうなるのでしょう?
水中では、何かトラブルが有った場合に、声を出したくてもほとんど出ませんし、聞こえません。
トラブルが有った時に、叫んでインストラクターに助けを求めようとしても、それはできないのです。
運良くインストラクターが見ている前でトラブルになれば助けてもらえますが、それは確率的に見ても少ないでしょう。

「インストラクターと一緒に潜れば安心」と考えるのも、一概に間違いでは有りません。
ただ、ある意味それは幻想に過ぎません。

では、どうすれば良いのでしょうか?

上達こそが最大の安全対策

お客様が上達することこそが最大の安全対策です。これ以上の安全対策は有りません。
もちろん、お客様がトラブルにあわないように自分自身で努力しているインストラクターはたくさんいます。
ある程度はトラブルのパターンが有り、経験豊富なインストラクターはそのツボを心得ていますから、ある程度はお客様を安全にガイドすることはできます。

しかし、先に書いたように、お客様を守るのは物理的に無理なのです。
実際、日本におけるダイビングの重大事故のほとんどがインストラクターが引率している状況下で起こっています。

インストラクターも様々な人がいます。どんなインストラクターでも、最初は「初心者インストラクター」ですし、安全管理に敏感なインストラクターもいれば、全く意識しないインストラクターもいます。
当店のお客様が旅先でダイビングをされた際の話でも良く聞かされますが、本当にインストラクターも様々で、かなり危険を伴うダイビングをするインストラクターも多くいます。
これは、インストラクターが悪い訳ではなく、考え方の違いです。
そもそも、「インストラクターはお客様の安全管理までは責任を持たない」と言う考え方なのです。
まだライセンスを持っていない体験ダイビングのお客様や、ライセンス取得講習中の場合はインストラクターに安全管理の責任が有ります。
しかし、「ライセンスを持っているダイバーは、安全管理の責任は自分自身に有る」と考えるインストラクターも多くいます。
実際、そのようにホームページに記載しているお店も有ったりします。
当店の安全管理に関する考え方はこちら

これに関しては、様々な考え方が有って当然ですし、「そんな無責任な・・・」と思う方もいらっしゃるかも知れません。しかし、そもそも欧米で開発されたダイビングのライセンス取得コースのカリキュラムそのものが、“自己責任”を前提としているのです。

では、お客様が安全にダイビングをするためにはどうすれば良いのでしょうか?
「しっかり安全管理してくれるインストラクターと潜る」と言うのも一つの方法では有ります。
でも、実際のところそれをお客様が判断するのは難しいところです。
なぜなら、インストラクターがどう安全管理しているかは、お客様からは余り見えにくいからです。そして、インストラクターの安全管理能力も、お客様からは判断がつきません。そして繰り返しますが、ダイビング中お客様を常に見ている訳にはいかないのです。

お客様が安全に潜りたいと思うなら、その方法は一つ。
自分自身が安全に潜れる能力を身につけること。これしか有りません。
トラブルにあわないようにスキルを身につけ、そしてトラブルにあった時にも余裕を持って対処できるスキルを身につけることで、お客様はどこへ行っても安全にダイビングができるようになるのです。

目標はライセンスでは無い

日本のダイビングショップは、ダイビングのライセンスを発行することだけが目標になっています。
本来、ダイビングのライセンス取得コースは、「4日で必ず取れる」と言うものでは有りません。
ダイビングの技術の習得度合いは、人によって全然違います。
上達の早い方もいらっしゃれば、遅い方もいらっしゃいます。
それはどんなスポーツでも同じです。誰もが同じように上達するのなら、みんなオリンピック選手になれてしまいます。
にも関わらず、なぜほとんどのダイビングショップでは4日(短いところは3日)で取れてしまうのでしょうか?

当店では、基本のなる日数は4日ですが、必ず4日で取得出来るというお約束はしていません。
ダイビングのライセンスを取得したということは、“ダイバーになった”と言うことになります。
ダイバーとして最低限のスキルを身につけ、ある程度安全にダイビングができて、少なくとも他のダイバーに迷惑をかけないダイバーになることが結局はお客様のためになるのは間違い有りません。

そう言うレベルになっていないにも関わらずライセンスを取得してしまうと、結果的にお客様が困る状況になるかも知れません。
ライセンスを取ることが目標ではなく、きちんとした技術を身につけることを目標にして頂きたいのです。

本当にバディ同士で潜れるのか?

オープンウォータダイバーと言うダイビングのライセンスを取ると、バディ同士で潜れるようになります。
これはPADIのカリキュラムの大前提です。
しかし、本当にライセンスを取ってすぐにインストラクターを付けずに潜って大丈夫なのでしょうか?
それは、“その人による”のだと思います。

講習をしていると、確かにライセンスを取ってすぐにでも自分で潜れるようなスキルが身に付くような方もいらっしゃいます。
そう言う方はどんどん自分で潜るようにすれば良いと思います。

しかし、ほとんどの方は、やはりライセンスを取っただけですぐにバディ同士で潜るのは危険かも知れません。
なぜなら、スキルが出来るのと、海の環境に慣れるのは別だからです。

スキルがきちんとできれば、ライセンスは取得できます。
しかし、実際にはそれだけでなく、海の環境に慣れることも大事です。
そして大切なのは、自分の力で潜れるくらいの技術を身につけるように、経験を積んでしっかりとした知識と技術を身につけることです。

その上で、バディ同士でインストラクターを付けずに潜るのも良いですし、もちろんインストラクターと一緒に潜ればさらに安全性は増します。

インストラクターの技を盗もう

「インストラクターはお客様を守れない」と書きました。
でも、だからと言ってインストラクターが必要ないと言う意味では有りません。
初心者のお客様は、海に慣れるまでインストラクターと一緒に潜った方が良いです。

矛盾しているように思えるかも知れませんが、初心者の方はインストラクターと潜った方が断然得るものが多いからです。

オープンウォータダイバー講習では、そのトラブルに対応するためのスキルを習います。
実は事故の多くは、それが未熟だったために起こっています。
言い換えると、トラブルの多くは自分で引き起こしているものが多いのです。

オープンウォータダイバー講習で習うスキルをしっかり身につけることで、まずは自分自身で引き起こすトラブルを防ぐことができます。

しかし、実際にはそれだけでは不十分です。
ダイビングは潜る場所や天候、海中のコンディションなどによって様々な状況判断をしながら潜ります。
ダイビングのライセンス取得講習では網羅できない、たくさんのスキルを適用しながらダイビングをするのです。
それらの技術を身につけるには、やはりインストラクターと一緒に潜って身につけるのが早道です。

大切なのはお客様の意識

安全に潜るためには、インストラクターに頼らなくても自分で潜れるようになることが大切だと書きました。
そのために肝心なのは、自分で潜れるようにしてくれるお店で潜ること。
最初に書きましたが、日本のダイビングショップはインストラクター付きで潜ることを前提として成り立っています。
そう言う意味では、お客様がインストラクターと一緒に潜らないで自分たちで潜るようになるのは、お店にとっては困ることでも有ります。
だからと言って、その技術を教えないのは本末転倒です。
きちんと教えてくれるお店で潜って、最終的に自分で潜れるような技術を身につけて下さい。
その上で、より安全性を高めるためにインストラクターと潜るのは良いことだと思います。
そして、そうなるためには、お客様が常に意識してスキルアップすることが大事です。
インストラクターに頼って頂けるのは嬉しいことですが、頼ってばかりいては自分自身の技術が伸びていきません。

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